久しぶりにセクエンツィア(中世音楽アンサンブル)によるヒルデガルト・フォン・ビンゲン。
千年近くも前のドイツの女子修道院長であったヒルデガルトのあまりに美しい聖なる歌たち。中世の思想をそのまま現代に当てはめるのは困難だが、しかし、宗教を超えた信仰という意味では、徳目の一つとして聖なる音楽を認めるのも良かろう。
人の言葉によって悟る者は
人の言葉によって迷う。自己に徹せよ。
外には何もないそうだ。
すべては自分の心が生み出したものだと。
聖女ウルスラと、ケルンで野蛮な兵士たちの犠牲となったとされる11,000の処女たち、そして教会を幻視したヒルデガルトのヴィジョンに基づく作品集。
すべてが因果体験の中にあることを知るが良い。
キリスト教においてもどうにもならなかった、そしてヒルデガルトの音楽をもってしても根本的な解決には至らなかった生死の問題の解決策が千年を経てようやく得ることができるようになったのだ。
録音から30年。ここには永遠がある。虚心に耳を傾けるべし。
(バーバラ・ソーントンは1998年11月8日、脳腫瘍のため48歳で亡くなっている)