石川県内強風の影響でIRいしかわ鉄道最終電車が足止めを喰らったとき、僕は手もとにあったiPodでセーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルのシベリウスを聴いていた。加賀笠間駅でまる1時間を、フィンランドの作曲家が生み出した、静から動へ、あるいは苦悩から勝利へという、ベートーヴェン以来のひな型をお手本にした2番目の交響曲を心静かに聴いていた。
(強風で電車の窓がガタガタ鳴る音と、シベリウスの音楽が不思議に同化していた)
(厳しい大自然に対峙してこそシベリウスの本質が見えてくるのだと思う)
人は誰でも苦しみや煩悩から解放されたいと心底では思っているのだと思う。
そして、人生を前向きに、幸せに生きたいと思っているのだと思う。
解放されるには勇気が必要だ。
勇気を持つには慈しみが必要だ。
そのために必須は大志を抱くことだ。
セーゲルスタムの、トゥルク・フィルとのシベリウスもやっぱり素晴らしい。
・シベリウス:交響曲第2番ニ長調作品43
レイフ・セーゲルスタム指揮トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団(2015.12.8Live)
巨躯から発せられるオーラが並大抵でない。
終演後、セーゲルスタムが大らかな笑みを浮かべ、オーケストラを称える様が映るが、これがまた可愛らしい。
そして、何より聴衆のお行儀の良さ。フライング・ブラヴォーなど皆無で、しっかりと残響まで楽しもうとする姿勢、その際の一瞬の静寂に感動する。
(あるいは、あまりの感動で身体が即座に反応しなかったのかどうなのか)
そう、音楽とは静寂さをも含めて音楽なのだ。
ちなみに、1999年の夏、僕は休暇を取ってロシア及びフィンランドの旅を計画していた。
レイフ・セーゲルスタム指揮ヘルシンキ・フィルの定期演奏会のチケットも押さえていた。プログラムはもちろんシベリウスだったが、詳細は失念した。しかし、諸事情で直前に旅行自体をキャンセルせざるを得ず、涙を飲んだ。今となっては残念な想い出。