
マイクのセッティングの関係なのか、あるいは会場が教会であるせいなのか、正規のライヴ録音とは思えないような音の軽さが気になるが、想像力である程度補填しつつやっぱり僕は感激した。
グリゴリー・ソコロフの弾くブラームス。
6つのピアノ小品作品118は、何より第2曲間奏曲の思い入れたっぷりの(ためのある)表現がいかにもソコロフらしい美しさ。最晩年のブラームスの孤独な心境がこれほどまでにリアルに伝わる例が他にあるのかどうなのか。
それにしても録音の限界の歯痒さよ。
グリゴリー・ソコロフは実演に触れるべきピアニストだとあらためて思う。
飛行機嫌いでインタビュー嫌い。来日を待っていてはいつまで経っても体験できない人だろう。それにインタビュー嫌いでもあるから彼の言葉から何かを想像して補完することもなかなか難しい。しかし、逆にいうと、彼の生み出す音楽そのものが彼のすべてを表現し尽くしているということゆえ、音楽そのものを純粋に享受するしかない。
2019年の欧州ツアーから。
6月20日は、スペインはザラゴザ・オーディトリウムのモーツァルトホール、また6月14日は、ヴッパタールはヒストリッシェ・シュタットハレ、そして、8月8日は、イタリアはラッビのベルナルド教会でのリサイタルの模様。会場による音響の差が歴然。
ともかくブラームスが最高だ。
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